2012年4月13日金曜日

山火事、事故。そして助け合い。

ブータンの気候は乾燥しているので、
人災、天災にかかわらず、しょっちゅう山火事が起こります。

先週の日曜日、
山火事の消火に向かう途中の、大勢の若い消防士を乗せた車が、
崖から転落し、死傷者が多数出る事故がありました。

負傷したのは、着任して最初の任務に赴く若い警察官達でした。
(ブータンでは、消防は警察の一部だそうです。)

日曜日の午後、そうとは知らず家で書き仕事をしていた私は、
仲間のドクターからの、「すぐ救急外来に来て手伝って!」
という電話で、慌てて家の外へ飛び出しました。

目の前の山からは、白い煙と炎が上がっており、
救急外来の外には、すごい野次馬の人だかり。

走って救急外来に向かうと、多くの負傷者が運ばれて来て、
混沌とした状態です。

最初は救急外来の医師と、数人の通りがかりの医師で対応していましたが、
災害大国日本からやって来た私にとっては当たり前の「トリアージ」とか、
外傷の初療とか、ブータンの人はみんなそれほど経験があるわけではありません。

日本では当たり前の「コード・ブルー」(院内緊急召集コール)とかもないので、
いったいどこからどうやって聞きつけたのか、不思議なぐらいですが、
見る見るうちに、外科医、脳外科医、整形外科医、放射線科医など、
外傷診療に関係する専門医が集結し、それどころか皮膚科医や助産師まで、
病院内外から集まって来て、自発的に手伝っています。

そして保健省の課長や大臣、気がつくと、学生や掃除係まで患者の搬送や
できることを自ら見つけて手伝っているではありませんか。

それでだけではありません。
何と国王陛下までもがおいでになり、
診療の邪魔をしないようにと配慮しながら、
部屋の片隅にたたずみ、じっと黙って様子を見守っておられました。

結局、約1-2時間後には全ての患者が無事収容され、
救急外来は落ち着きを取り戻しました。
結局死者2名、負傷者17名(うち2名重症)だったそうです。
翌日、首相もお見舞いに訪れました。

ブータンでは、近しい人が病気や怪我をすれば、
すぐお見舞いに行くのが当たり前。
今回は大きな事故だったのに加え、
公務中の警察官が巻き込まれた事故だった
ということもあったのでしょう。

私にとっては、災害医療の必要性を改めて認識したのと、
ブータン人の「助け合い」の底力を見せられた、
貴重な経験でした。

亡くなられた、若い御霊のご冥福を
心からお祈りします。








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