2013年8月5日月曜日

世界母乳育児週間

毎年8月第1週は、世界母乳育児週間です。

赤ちゃんの健やかな成長と発達のために、
母乳育児はとても重要な役割を担っています。

例に漏れずブータンでも、母乳育児の推進は大きな課題の1つです。
幸いブータンでは、今もなお、母乳育児が自然な事、当たり前な事
であると認識されていることに変わりはありませんが、
時代の流れとともに、少しずつ損なわれかねない危機感も否めません。


特に、働くお母さんの母乳育児を支える体制がなく、
知識の不足や風習、そして近代化によって簡単に人工乳や哺乳瓶が手に入る
ことなども障壁のひとつとなっています。

このような状況下でも、母乳育児を推進して行くためには、
いったいどうすればよいのでしょうか。

今年も世界母乳育児週間を機に、社会の関心を高めるため、
ブータン保健省並びにブータン国営放送、
ブータン人小児科医と協力して、
様々なイベントを企画しています。

まず、今年のテーマである「Breastfeeding support; close to mother
にちなんで、ティンプー市内に住む母乳育児を経験した母親を中心に
「母親サポートグループ」を保健省主導で結成しました。

自身の経験とセミナーで得た母乳育児に関する正しい知識をもとに、
これから母乳育児をしようとする母親のピアサポートをするのが狙いです。

メディアを通して、彼女達の活動を紹介することは言うまでもありませんが、
母乳育児に関する問題のみを出題し、母親達が解答者として参加する
クイズ番組を企画し、テレビ収録を行いました。
こちらも世界母乳育児週間中に全国放送する予定です。
 
病院でのケアの向上もいろいろ手がけています。
病院で出産した母親に向けた母乳育児に関するビデオ教材の開発、
退院後も母乳育児への継続的な支援を提供できるLactation Clinicの開設等、
限られた時間と人材をやり繰りして、何とか支援の向上をと、
保健省と緊密に連携を取りながら努力をする毎日です。

母乳育児には妊娠期を通じた、継続的な支援と社会の意識向上が不可欠です。
私の働く病院には、数えてみると母乳育児に関わる部門が何と9つもありました。

今年は、その全ての部署を巻き込んで、
一緒に世界母乳週間をお祝いをしたいと思います。

手始めに、看護師さん達と我が新生児病棟の入り口を飾り付けしました。


















千里の道も一歩から。

1つ1つの取り組みは小さくても、それがやがて大きな流れへと変わって
行くと信じて...   

2013年8月4日日曜日

インド名門医学校卒業生の同窓会

ブータンには医学部というものがありません。

よってこの国の全てのお医者さんは外国の医学部を卒業しています。
そしてその多くが、インドのとある医学校を卒業しています。
インド人でも入るのが難関といわれる名門校だそうです。


この医学校は最初の卒業生から数えて実に40年もの間、
毎年この国の生徒を受け入れてきました。

8月4日はその医学校の創立記念日。

毎年この日には決まって、この医学校の卒業生が
ブータン全土から集まります。

シニアの卒業生には、この国の医療を支えて来た重鎮たちも
含まれますが、35年前に卒業した人から、今年卒業した人まで、
老いも若きも、男性も女性も、皆集まって、
生時代の思い出話に花を咲かせたりして、
旧交を温めます。

昨年この会に、私も呼んで頂き出席しました。
「卒業生でもないのに、いいのかなあ」という懸念どおり
出席してみると卒業生でないのは私だけ。
しかもわたしは外国人。。。
でも、その懸念とは裏腹に、みんなまるで家族かのように
かく迎えてくれました。
そして、私が前例となって、次の年からは卒業生だけでなく、
その伴侶も呼びましょうということになりました。 

今年も例年のように、その会は開かれましたが、
伴侶がいても昨年までと同様に、卒業生達は、
臆する事なく飲んで、食べて、しゃべって、笑って 
そして踊りまくっての大はしゃぎ。

そして何と来年からは、子供、孫も呼びましょうということになりました。
さて来年はいったいどんな会になるのでしょうか。
どんどん広がる友達の輪、いや家族の輪。

恐るべし愛校心と、縦の繋がり、青春時代の絆の深さです。
でも、こういうのって何だかすごくいいなあって思いました。


看護師さん向け講義


私の勤めている病棟には、
新生児科医がわたし一人しかいません。
よって、日勤帯は私が毎日ひとりで患者さんの診療にあたり、
休日・夜間はブータン人の小児科医と交代で対応しています。

いつでも24時間必ず医師がいる日本のNICU(新生児集中治療室)
でもそうですが、こういう状況では、
医師がすぐ対応できるわけではないので、
それぞれのシフトに入っている看護師さんの観察力が、
ことさらとても大切になってきます。

よって昨年から少しずつ、
新生児によくある、特有の疾患の看護のポイントを、
病態生理の理解から、どういうことが予測され、
どういうところを観察し、どうなったら早めに
医師に知らせてほしいかを、
具体的にわかりやすく伝えるために、
毎朝看護師さんに1時間程で講義をしています。

余り知られていないかも知れませんが、
新生児期に特有の病気が、実は意外にたくさんあります。
例えば、胎便吸引症候群、壊死性腸炎、未熟児網膜症、
動脈管開存症などです。

看護師さんも足りないため、1回ですべてのスタッフを
カバーすることができません。

よって、同じトピックを2回、3回と繰り返し講義しています。

そしてその時、病棟にいる患者さんの疾患を、
なるべく扱うように心がけています。

最初は英語での講義、パワーポイント作成も一苦労でしたが、
今では随分慣れて、あまり苦に感じなくなってきました。

講義をする部屋は、病棟の倉庫を改造したにわか仕立てで、
窓もなくてそれはそれは窮屈ですが、それでも毎日、
新しい知識を吸収して、またはどこかでいつか聞いた事のある
知識でもそれを改めて思い出してもらい、
例え一ミリでもいいから前進し、
今日よりも明日の新生児ケアが、
よくなることを願って、続けています。