ブータンの気候は乾燥しているので、
人災、天災にかかわらず、しょっちゅう山火事が起こります。
先週の日曜日、
山火事の消火に向かう途中の、大勢の若い消防士を乗せた車が、
崖から転落し、死傷者が多数出る事故がありました。
負傷したのは、着任して最初の任務に赴く若い警察官達でした。
(ブータンでは、消防は警察の一部だそうです。)
日曜日の午後、そうとは知らず家で書き仕事をしていた私は、
仲間のドクターからの、「すぐ救急外来に来て手伝って!」
という電話で、慌てて家の外へ飛び出しました。
目の前の山からは、白い煙と炎が上がっており、
救急外来の外には、すごい野次馬の人だかり。
走って救急外来に向かうと、多くの負傷者が運ばれて来て、
混沌とした状態です。
最初は救急外来の医師と、数人の通りがかりの医師で対応していましたが、
災害大国日本からやって来た私にとっては当たり前の「トリアージ」とか、
外傷の初療とか、ブータンの人はみんなそれほど経験があるわけではありません。
日本では当たり前の「コード・ブルー」(院内緊急召集コール)とかもないので、
いったいどこからどうやって聞きつけたのか、不思議なぐらいですが、
見る見るうちに、外科医、脳外科医、整形外科医、放射線科医など、
外傷診療に関係する専門医が集結し、それどころか皮膚科医や助産師まで、
病院内外から集まって来て、自発的に手伝っています。
そして保健省の課長や大臣、気がつくと、学生や掃除係まで患者の搬送や
できることを自ら見つけて手伝っているではありませんか。
それでだけではありません。
何と国王陛下までもがおいでになり、
診療の邪魔をしないようにと配慮しながら、
部屋の片隅にたたずみ、じっと黙って様子を見守っておられました。
結局、約1-2時間後には全ての患者が無事収容され、
救急外来は落ち着きを取り戻しました。
結局死者2名、負傷者17名(うち2名重症)だったそうです。
翌日、首相もお見舞いに訪れました。
ブータンでは、近しい人が病気や怪我をすれば、
すぐお見舞いに行くのが当たり前。
今回は大きな事故だったのに加え、
公務中の警察官が巻き込まれた事故だった
ということもあったのでしょう。
私にとっては、災害医療の必要性を改めて認識したのと、
ブータン人の「助け合い」の底力を見せられた、
貴重な経験でした。
亡くなられた、若い御霊のご冥福を
心からお祈りします。
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