2011年12月8日木曜日

ヨガ・健康と幸福

先週からヨガを始めました。
ティンプーにはヨガが出来るところが何カ所かあります。

本場インドが近いことも影響しているのかも知れませんが、
インド文化の色濃いブータンにとって、ヨガが身近なのも
ある意味当然かも知れません。

テレビでも、ご高名なインドのヨガマスター・サドゥが
何千人もの人を広場に集めてやっている公開野外プラクティス?
の模様がよく放映されています。

私のヨガの先生は、同じ病院のドクター。
本場インドで修行を積んだ方です。
病院の最上階の使用されていない会議室で、
たっぷり2時間のセッションを行います。

先週出来なかったいくつかのポーズが、今週は出来るように
なったりして結構楽しいです。

お祈りや瞑想、ヨガに熱心なブータンの人々を見ていると、
自分の心とカラダをしっかり見つめ直すことって、今まで
あんまり意識していなかったけど、「幸せ」とニアリーイコールな、
こころとカラダの「健康」にとっては、意外に大切な習慣だなあと、
改めて思います。

ちなみに私の一番好きなポーズは「Vrksasana 木のポーズ」です。

ちなみに、Center for Bhutan Studiesというブータンの公的調査機関が
発表した、2010 Surveyの結果には、GNHの重要な要素の1つ、
「健康」に関する指標の調査結果が載っていますので
よかったら覗いてみて下さい。

http://www.grossnationalhappiness.com/






2011年12月3日土曜日

世界エイズデー


12月1日は世界エイズデーでした。

ブータンでは5人のHIV陽性者がカミングアウトしてテレビ出演し、自らの経験を語るなど、
差別や偏見をなくすための公開討論会が放映されました。

日本以上に村社会であるここブータンで、これがなされた事がとても驚きでしたが、
こういうメッセージはPR効果絶大だと思います。

セレモニーでスピーチした、クイーン・マザー(前国王の王妃の一人)がカミングアウトした
HIV陽性者をハグしているシーンもニュースで放映されていました。

病院では、母子感染を予防するための医療従事者のためのワークショップが
開催されました。



kuenselonline » Blog Archive » HIV/AIDS gets a face

2011年11月29日火曜日

お葬式

今日は、仕事が終わった後、同じ病院で働くドクターのお母さんが
亡くなったので、お葬式に行ってきました。

前にも書きましたが、ブータンでは職場の人の冠婚葬祭はとても大事にします。

お葬式は、ティンプーの街の外れにある斎場でとりおこなわれました。


遺族に挨拶すると涙1つなく、むしろ清々しい様子。
彼曰く、突然の死ではあったが、痛みや苦しみなく、
日本流で言うまさに「ポックリ」逝った事。
家族の中で一番長老だった彼女が、子ども達より先に逝った事。
最期の瞬間、彼が死に直面している彼女を精神的に支え、瞑想し
リラックスするよう促す事で穏やかに息を引きとることができた事。
これら全てが、遺族にとっては、悲しみよりもむしろ喜びであると。。。

なるほど。。。

また、驚いたのは親類関係でもない7人の葬儀を一度にやっていたことです。
若くして、なくなった妊婦さんと赤ちゃん。
肺炎で亡くなったティーンエイジャーなどなど。
お年寄りだけじゃない。色んな死のかたち。
それぞれのストーリーも皆で共有します。

斎場は、広場に簡単な屋根があるだけのシンプルな作りで、
お供え物の奥に棺を入れたやぐらが組まれており、
その前でお坊さんがお経を上げた後、一斉に火が放たれます。

盛んに燃え盛る棺を見つめながら、葬儀に参列したドクターの一人が
私に耳打ちしてくれました。
「この火を見るたびに、我々は Impermanence( 永遠のものはない)
ということを思い出すんだよ。」と。

ちなみにブータンでは埋葬はせず、お墓も作りません。
遺骨は、神聖な場所に散骨するなどして自然に帰すのが一般的だそうです。

2011年8月22日月曜日

緊急手術

今日は、赤ちゃんが一人、お腹の病気で緊急手術になりました。

あいにくこの国唯一の小児外科医が不在でしたので、代わりに
この国唯一の脳外科医が執刀してくれて、先程無事終わりました。

脳外科医が赤ちゃん(新生児)のお腹の病気の手術をするのは、
日本ではまず考えられない事です。

しかしブータンでは、日常茶飯事です。
逆に、小児外科医が頭の手術をする事もある。

例え、経験があっても、なくても、
そこに居る人で、そこにある物で、いのちを救うために、
今出来る最大限のことをただひたすらにするしかない。

それがここの医療です。

そして、これがきっと世界中で営まれている
医療の原点なのだと、日々改めて思いながら、
彼らとともに汗し、
最善を尽くす日々です。

今ここにいる
赤ちゃんとその家族の幸せを守るために。





2011年8月14日日曜日

旬の味覚と病棟ランチ

最近めっきり肌寒くなって来たティンプー。
ティンプーでは8月はもう秋です。

週末、野菜市場に出かけると、秋の味覚、「マツタケ」や
「セセシャモ」と呼ばれる黄色いきのこが旬でたくさん
店頭に並んでいます。

大家さんにもらった立派なマツタケで、創作和風ブータン料理を作ってみました。



タッパに入っているのは、病棟に持っていってお昼に皆で食べるためです。
小児科、新生児科の病棟では、毎日、病棟にある炊飯器でお米を炊いて、
各自持ち寄ったおかずを分け合い、お昼ご飯を一緒に食べます。

小児科部長からは患者さんにもらったという「セセシャモ」をお裾分け
してもらいました。こちらは、彼に教えてもらったブータンレシピで、
「シャモダチ」(きのことチーズのカレー)に挑戦。
これも病棟に持っていき、仲間にお味見してもらいました。


この「病棟ランチ」、一人でご飯を食べる事が嫌いな私にとっては、
とっても有り難いシステム。

文字通り「同じ釜のメシを食う」仲間といった感じで、苦楽を共にする病棟の
看護師さんやドクターとも、何だか連帯感が感じられるから不思議です。

2011年8月10日水曜日

オンコール

今週、月曜日から日曜日は、私がオンコール(当番)にあたっています。
オンコールとは、時間外に入院中の患者さんの急変、または入院が必要な
患者さんに対応する当番の事をいいます。

日本では「当直」と言って、病院の中の当直室に待機しますが、
ブータンには当直室はありません。

医師が少ないので、当直シフトを組むことができないのです。

そのかわり、ドクターをはじめ病院職員は、院長も含めて、病院の敷地内
に用意されている職員宿舎に住んでいます。

まさに究極の職住近接です。

しかし、昨今厳しいティンプーの住宅事情を考えると、痛し痒しといった
ところのようです。


医療費が無料のブータンでは、患者さんは時と場所を選ばず、診療を求めて来られます。
休みの日にドクターの家にやって来て、診てくれという患者さんも珍しくありません。
しかしそういう人は大抵、知り合いや友達、親戚だったりするので、ブータンの人は
決して断りません。
小さな社会であるブータンでは、誰でも何処かでなにがしかの繋がりがあるので、
事実上、断る事はできないのです。


私は病院から歩ける距離に住んでいますが、いくら治安の良いティンプーと言えども、
夜道は危ないという事で、夜間に病院からの呼び出しがあるときは、病院の救急車が迎えに
来てくれます。


今日は水曜日ですが、早くも緊急帝王切開、緊急入院、急変と3日連続で
夜間の緊急呼び出しがありました。

夜中の病棟は看護師さんが2人で25人の赤ちゃんを守ってくれています。
といっても看護師さんだけでは到底ケアしきれないため、家族が病棟に寝泊まりして、
24時間付き添い、授乳したりオムツを替えたりしています。


一応、家族には専用の部屋がありますが、大抵満員なので、場合によっては、
床にゴザのような物を敷いて赤ちゃんのベッドの横に寝たりしています。

入院が何ヶ月にも及ぶ事もあるので、家族は本当に大変だと思いますが、
親戚・縁者が皆で支え合い、ひとつの小さないのちがこの世に巣立っていく
日を夢見て、ただひたすらにその時を待ちます。

2011年8月5日金曜日

お見舞い

今日は金曜日。
病棟の仕事を片付けて、かねてからご家族がお悪いと聞いている
同僚のお宅に職場の皆でお見舞いにいきました。

同僚のお母様は、脳梗塞を煩い自宅で臥せっておられ、ご家族が
看病されているのです。
ブータンでは、職場の同僚またはその近しい方(親や子ども)
が病気の場合、お見舞いにいくそうです。

病棟のみんなでカンパして、段ボール箱一杯のお見舞い品を持参し、
お宅に向かいました。

陸軍宿舎の一角にあるお宅はとても広く、客間でお茶を頂いた後、
お母様が療養中の奥の間に通されました。
お母様は食事がとれないという事で、点滴をされていました。

ブータンには老人ホームはありませんので、在宅介護が基本です。
日本のような介護保険制度もありません。
家族や親戚に医療従事者がいればまだ良いですが、それでも
大変である事にはかわりありません。

衛生状態の改善やプライマリヘルスケアの充実により、
ここ30年間でブータンの平均余命は46歳から66歳まで伸びて来ています。
それに伴い、お年寄りの介護をどうするのか、という問題も徐々に顕在化
しつつあります。

ブータンの人々の絆を大切にする文化や、Gross National Happinessの
観点からも、政府はできるだけ施設や病院に収容するのではなく、
地域や在宅でのケアをすすめていきたいとの考え方をもっている
ようですが、ここでも人材確保、財源確保が課題です。

明日は、ここブータンで同じく活動している京都大学ブータン友好
プログラムの同志のカリン高齢者地域ケアプロジェクトの一貫で、
高齢者ケアに関するブータン日本合同国際シンポジウムが京都で開催されます。
http://www.jp.kubhutan.org/project-updates/guojishinpojiumukaicuinoozhirasenew

きっと、お互いの国にとって実り多きシンポジウムとなることでしょう。
どんな議論になるのか、聞きにいけないのがとても残念です。

今日は、絵(写真)ナシで恐縮でが、内容が内容だけにどうかご容赦のほど、、、

2011年8月4日木曜日

病院でのモラルサポート

昨日8月3日はFirst Sermon Lord Buddhaという祝日でお休みでした。

お釈迦様が悟りを開いた後に、最初に教えを説いた日として、
ブータンでも最も縁起の良い日とされているそうで、本来は
一日断食をし、お寺にお参りをしたりして過ごすそうです。

 午前中テレビの据え付けがあったため、午前の回診は当直の
先生にお任せして、私は午後から病棟に出向きました。

病棟ではホスピタル・ラマと呼ばれる高僧に出逢いました。
彼は定期的に病院中を回り、リンポチェと呼ばれる、これまた
偉いお坊さんに祝福を受けたというスンケと呼ばれるお守りの紐
や何種類ものハーブを練り込んで作られた2mm程の正露丸の
ような丸薬を配り歩きます。


興味深いのは、配るのが患者さんだけではなく、その家族、そして職員にまで
等しく配ってくれるということです。

写真は、丸薬を有り難そうに頂く、病院の守衛さんです。



病院にいることで、お寺にいくことが出来ない患者さんや、家族、病院職員
にとって、ホスピタル・ラマは、まさにモラルサポートとして、とても
重要な存在のようです。


翌日、実家でプジャ(法要)をしたというボスが、スンケと医学の守り神である
メディスンブッダ(薬師如来?)のネックレスをくれました。

病院は辛い職場ではありますが、こうして色んな形でモラルサポートが受けられる
と少し気持ちが軽くなり、病気と闘っているのは自分ひとりじゃないと思え、
何となく連帯感が感じられるから不思議です。

病院ではこの日、また一人、赤ちゃんが天に召されました。

私はいつもの通り、メモリアルチョルテンに行ってお祈りを捧げて帰りました。



小雨振る中、この日はいつにも増して、日が暮れても夜遅くまで、多くのティンプー
市民がチョルテンを訪れ、祈りを捧げていたのでした。

2011年6月15日水曜日

Lord Buddha Parinirvana Day 涅槃会

今日6月15日は、ブータンでは国民の祭日でお休み。
お釈迦様の命日とでも言いましょうか、「涅槃会(ねはんえ)」と呼ぶそうです。

病院では、祭日は外来はお休みですが、私は入院患者さんを回診しにいつも通りに出勤。

帰り道すがら、ふとメモリアルチョルテンをみると、スゴい人だかり。


気がつくと、祭列がこちらに近づいてきます。


写真右手で待っている人たちは、ただ見ているのではありません。
祭列の人にお布施を渡して、祝福してもらうのを並んで待っているのです。


写真左手の人が持っている袋がお布施。相当集まっています。

では、どうやって祝福を受けるのか。

お釈迦様の像の袂に触って、その手で自分の頭をなでたり、
頭を垂れて、祭列の人たちがもっている教典の包みで、頭をコツンと小突いてもらうのです。

後から聞くと、この祭列はブータンの若者達の間で仏教心が薄れないように、
毎年この日に若者達で祭列を組織し、メモリアルチョルテンから出発し、街を練り歩くようです。

それにしても、綺麗に整列したブータンの人を見るのはなかなかない光景。

祭列に祝福されると「功徳がある」ので、みんなこぞって並ぶのです。

ブータンの人にとって、「功徳がある」とは、相当なモチベーションになるという事が伺えます。

これって何か良いこと(例えば清潔概念の普及、街の清掃とか)に使えないかなあと、
ついついよこしまなことを考えてしまうのでした。

2011年6月11日土曜日

Housewarming 新築祝い

今日、6月11日は、ブータンの陰暦で縁起がいいとされている日。日本でいう「大安」です。
よってこの日は、お日柄にあやかろうと、公私ともに各種イベントが満載でした。
結婚式、昇進、そしてペンタバレン(5種混合ワクチン)の再開まで。
私たちは、新生児病棟の看護師さん「ソナム」ちゃんが、パロに家を建てたので、その新築祝いの席に招かれました。
ソナムちゃんはまだ20台半ば。若いのに、こんなに立派なお家建てて、偉いなあ。


まず、驚いたのはその出席率。
職場の人は、その時間、病棟のシフトに入っている人を除き、全員参加。
前回の飲み会の時もそうでした。
ティンプーからパロまでは、車で山道を1時間程ドライブしなければなりません。
ですから決して近いわけではありません。
みんなご家庭もあるし、一人ぐらいかけてもおかしくないのに、ちゃんと顔を揃えています。
ブータンでは職場での関係をとっても大切にするんだなあと、改めて思いました。
ソナムちゃん、おめかししてとっても綺麗。


新築のお祝いは、チベット仏教のお祈り「プジャ」で始まります。
太鼓やホルン、シンバル等で奏でられる荘厳な旋律とともに、お経と言っていいのかわかりませんが、お祈りが唱えられます。
お祈りが唱えられている間、お客にはお菓子や、お茶、お酒、ドマ等が振る舞われます。


お祈りが終わると、今度は家の外で歌や踊りが始まり、近所の人が集まってきます。


豪華な夕食をご馳走になった後は、招かれたお客が歌や踊りで盛り上げ、お祝いします。
この頃には、近所の人、親戚の人、職場の人等、恐らく100人はゆうに超えているでしょうか。
大勢の人が集まり、家は活気に包まれます。

ブータンは小さな社会なので、これだけの人が集まると、幼なじみに再会したり、
その幼なじみが誰かの親戚だったりで、Housewarmingは、まさにHeartwarming。
熱気で心も体も温まります。

すっかりいい気分になってパロを後にしましたが、待ち構えていたのはまたしても延々と続く曲がりくねった山道。
「ほろ酔い」気分が、ティンプーに着く頃には、立派な「乗り物酔い」になっていたのでした。 

とほほ。